退職を考えている人、もしくはすでに退職した人の多くが考えるであろう失業保険手当の受給。
ここでは、その申請から手当を受給するまでに必要な手順と流れについて紹介します。
特に、初めて会社を退職する人にとっては、失業保険やハローワークという存在は知っているものの、具体的に何をどう手続きすればいいのかよく分からないという場合もあると思います。
在職中から準備しておくと得になる部分もあるため、できれば退職前に知っておいてほしいこともあります。
基本的なことも含めて全手順について紹介しているため、かなり長くなりましたが、再就職の期間を最大限生かせるように、失業保険について詳しく知っておきましょう。
このページの目次
失業保険の受給条件を知る。どんな人がもらえる?
「失業保険手当」とは、再就職活動をする期間の生活を保証してくれる手当てです。
そのため当然ですが、再就職をする気がある人に支給される手当てとなります。
この失業保険手当は誰がもらえるのか。
上でも触れている、「再就職をする気がある」というのも含まれますが、正確には以下の条件を満たした人に受給資格があると定められています。
- 現在失業の状態(働く意志と能力があり就職活動はしているけど働き口が見つからない状態)にあること
- 過去2年間の間に、12カ月以上雇用保険に加入していたこと(自己都合退職の場合)
- 過去2年間の間に、6カ月以上雇用保険に加入していたこと(会社都合退職の場合)
つまり、現在失業状態にあり、かつ直近で最低限6か月以上の間、雇用保険に加入し保険料を納めていた人が対象になるということですね。
会社都合退職か自己都合退職かについては、下で詳しく紹介していきます。
関連記事)
失業保険手当の受給資格があるかチェックする基準とは?雇用保険未加入の場合も受給できる?
失業手当の金額と期間を確認。いつからいつまで・いくらもらえる?
同じ失業保険でも、人によって受給できる期間や金額には、場合によっては大きな違いがあります。
自分がどれくらいの期間、どれくらいの金額を受給することができるのか。ここは、以下のステップで早めにチェックしておきましょう。
ちなみに、失業保険手当を受給可能な期間は、退職から1年です。
そのため、自分が受給できる期間から逆算して最初の手続きに行く必要があります。
例えば、受給可能な期間が3か月の場合。
自己都合退職だとすると、待機期間3か月も合わせると最初の支給まで約4カ月ほどかかります。
12カ月-(待機期間4カ月+支給期間3カ月)なので、退職から5カ月以内には手続きに行くほうが良いです。
特別な理由がなければ、退職からすぐ、1カ月以内程度には行く方がおすすめです。
1)「 会社都合退職」なのか「自己都合退職」なのか確認
上でも少し出てきましたが、まず大きいポイントは、自分が「会社都合退職」にあたるのか、「自己都合退職」にあたるのかということ。
「会社都合退職」の場合は、受給開始のタイミングや受給期間など、多くの面で得になることが多いです。
「自己都合退職」のデメリットと「会社都合退職」のメリット
「自己都合退職」の場合は、失業保険が支給されるまでに3か月間の給付制限期間があります。
ここでは詳しい説明は省きますが、簡単にいえば、支給が開始されるのが退職から約4か月後となります。
そのため、「自己都合退職」の人の場合は、退職する際に当面の生活のための貯金を用意しておく必要があります。
しかし、「会社都合退職」の場合は、この給付制限期間が無し。退職から約1ヵ月で支給が開始されます。
経済的にも精神的にも、失業中のこの3か月の差というのはかなり大きいですよね。
また、受給期間も、自都合退職の場合は多くの人が90日間となりますが(年齢や勤続年数によって変わります)、会社都合退職の場合は、120日・150日・180日などになるケースも多い。
早く支給が開始されて、長く受給できるという、手当の面からいえば、かなり得なことが多いのが「会社都合退職」なのです。
「会社都合退職」になる条件とは?
この「会社都合退職」になる場合とはどういうケースなのか。
分かりやすいところでいえば会社の倒産などが該当しますが、たとえ自分から退職を申し出た場合でも、必ずしも「自己都合退職」になるわけではありません。
例えば残業時間がかなり多かった場合などには、離職するのにやむを得ない理由があったとして、会社都合退職に変更できる場合もあります。
会社都合退職にできる条件については、詳しくは下の記事に書いていますが、ここでも簡単に説明します。
関連記事)失業理由を自己都合から会社都合退職に変更する方法は?特定受給資格の条件まとめ
主なものをまとめると、以下のような基準を満たしている場合は、会社都合退職に変更できる可能性があります。
- 会社の倒産による退職
- 事業所の廃止・縮小による退職
- 勤務先の移転により通勤が困難になったことによる退職(目安は往復4時間以上)
- 会社からの一方的な解雇による退職(懲戒解雇など自分に責任がある場合は除く)
- 希望退職制度による退職
- 契約社員として契約を1回以上更新し3年以上勤務している状態で、会社から更新しないことを告げられたために退職した場合
- 入社時に契約を更新する条件だったにも関わらず、実際は更新されなかった場合
- 労働条件が採用時に示された内容と大きく相違があった場合(1年以内に限る)
- 2か月以上連続で、固定給の3分の1を超える額が期日までに支払われなかった場合
- 予告なしに固定給を15%以上下げられたために退職
- 退職前の3か月以上に渡って残業時間が月45時間を超えていた場合
- 専門職で採用されたにも関わらず、別の仕事内容を命じられ給料も下がったため退職した場合
- 10年以上同じ仕事をしてきたものの、急に別の仕事に研修・訓練などなしで異動させられたために退職した場合
- 上司や同僚からのパワハラ・嫌がらせなどがあった場合
- 介護・看護が必要な家族がいる状態で無理に転勤を命じられたために退職した場合
- セクハラをされて担当部署などに相談したものの1ヵ月以上改善が見られず退職した場合
- 労働者の生命・身体をほどする条例に会社が違反しており、行政から指摘が入ったにも関わらず1か月以上改善が見られなかったために退職した場合
参照:ハローワーク公式サイト
またこれら以外にも、体力の不足や心身の障害など、正当な理由による退職の場合は、「会社都合退職」と認められることがあります。
上記の通り、自己都合退職か会社都合退職かでは大きな違いがあるため、もし自分が該当しそうな条件がある場合は、会社都合退職で申請するようにしましょう。
会社から渡された離職票の理由が「自己都合退職」になっている場合も、上の条件に当てはまる場合は、ハローワークの職員さんから前職の会社に確認して、「会社都合退職」に変更してもらうことも可能です。
在職中に証拠を準備しておく
「会社都合退職」にするためにも、ぜひ在職中から準備をしておきたいのが、「会社都合退職」であることの証明についてです。
例えば、残業時間が多く、会社都合退職の基準である月45時間に該当している場合は、その残業時間が分かるタイムカードや給与明細のコピーなどを準備しておきましょう。
私の場合も、勤務時間が記載された給与明細を最初の申請時に持っていったことで、会社都合退職だと認められました。
2)支給期間の計算方法
自分が自己都合退職か会社都合退職なのかが分かったら、次に、いつから手当が支給開始され、またいつまで受給ができるのか、失業手当の期間についてチェックしてみましょう。
これは、年齢や勤続年数などによっても細かく変わってくるため、詳しくは下の記事にまとめています↓
関連記事)失業保険手当はいつからいつまでもらえる?自己都合退職による待機期間に注意
大まかにいうと、
会社都合退職の場合:退職から約1か月後に支給開始。支給期間は90~180日間。
自己都合退職の場合:退職から約4か月後に支給開始。支給期間は90日間。
となる場合が多いです。
3)支給金額の計算方法
次に、支給される金額がどれくらいになるのかを計算します。
これも詳しい計算方法はわりとややこしくなるため、以下の記事にまとめています↓
関連記事)失業保険手当はいくらもらえる?1日あたりの支給金額の計算方法
大まかにいえば、
前職の退職前6か月の給料の総額(ボーナスは除く)を180日で割った金額の80~50%
が、1日あたりの支給金額になります。
例えば、月給30万円だった場合、
300000(円)×6(ケ月)÷180(日)=1万円
その80~50%なので、1日あたり、5000円~8000円の支給となります。
80~50%とわりと幅が広くなっていますが、大体60~70%程度になる場合が多いんじゃないかと思います。
この部分の詳しい計算方法についても、上の記事に書いているので、正確な数字を知りたいという人はチェックしてみてください。
ハロワでの申請から失業手当受給までの流れ
次に、実際に退職した後の流れについて。
ハローワークに行って失業保険手当の手続き申請をするところから、手当の支給が開始されるところまで紹介していきます。
まず下の図が、申請から受給開始までの大きな流れです。
ここでも、「会社都合退職」か「自己都合退職」かによって少し流れが変わってくるところがあります。
自己都合退職の場合の流れ
- 退職
- 初回の求職手続き
- 7日間の待機期間
- 初回説明会に参加
- 3ケ月の給付制限
- 給付制限中に1度目の失業認定日
- 2度目の失業認定日
- 初回手当支給
会社都合退職の場合の流れ
- 退職
- 初回の求職手続き
- 7日間の待機期間
- 初回説明会に参加
- 失業認定日
- 初回手当支給
大きな違いとしては、上でも紹介したように「自己都合退職」の場合は、3か月間の給付制限期間があるというところです。
以下、流れについてひとつずつ紹介していきます。
ちなみに、失業中のお金の余裕がない場合、退職後に失業保険の申し込みをする前に、短期間でまとまった収入を得られる治験のアルバイトに参加するのがおすすめです。
関連記事)
失業保険受給前のバイトには短期の治験がおすすめ
1)ハローワークで初回の求職手続き
退職したら、まずハローワークにいって失業保険手当の申請を行う必要があります。
どこのハローワークに行くのか確認
まず確認するのは、自分が行くハローワークがどこにあるのかということ。
ハローワークならどこでもいいというわけではなく、住所によって変わってきます。
分からない場合は、ハローワークの公式サイトから調べることができます↓
必要書類を持参し窓口へ
最初に行う手続きは、特に問題などがなければ、時間はかからずすぐに済みます。
ただ午後は混雑しがちなので、おすすめは午前中・朝イチに行くこと。
ハローワークに行くと、雇用保険受給手続きの窓口があるため、そこで用意した書類一式を提出し、また「求職の申し込み(求職登録)」を行います。
以下が、この最初の手続き時に必要な書類などです↓
退職したら(できれば退職前から)確認して、準備しておきましょう。
- 雇用保険被保険者証
- 雇用保険被保険者離職票(1、2)
- 運転免許証(またはその他の写真付きの身分証明書。または、住民票・パスポート・健康保険証のうちの2種類でも可)
- マイナンバーカード、通知カード、個人番号確認書類(住民票など)
- 写真2枚(3cm×2.5cm)
- 印鑑
- 本人名義の預金通帳
この中でも手続きする上で重要なのは、
「雇用保険被保険者証」
「雇用保険被保険者離職票(1、2)」
の2つ。
「雇用保険被保険者証」に関しては、前職の入社時に会社から渡されているもの。捨てたりしていなければ、自分で持っているはずです。
「雇用保険被保険者離職票(1、2)」については、退職後約1週間前後に会社から自宅へ郵送されてくるのが普通です。
もし会社が離職票をすぐに送ってくれないなどの場合は、その分手続きが遅れてしまうため、催促してみましょう。
元の会社に連絡しづらい場合は、ハローワークの担当者に相談してみるのがいいと思います。代わりに連絡してくれる場合も多いです。
退職理由に異議があればしっかり申請
提出資料などに特に問題がなければ、基本的に手続きはすぐ終わります。
ただ、注意点としては、離職票に書かれている「退職理由」について異議がないかと、担当者から聞かれると思います。
ここで、自己都合退職を会社都合退職に変更したい場合などには、「異議あり」とする必要があります。
私の場合も、最初は自己都合退職となっていたものの、残業時間がかなり多かったため、ここで「異議あり」として、結果的に会社都合退職に変更ができました。
上の「必要な書類」のところには挙げていませんが、もし失業理由を「自己都合退職」から「会社都合退職」に変更しようと考えている場合は、会社都合である理由(やむを得ない理由による退職)を証明できるものを持っていきましょう。
2)待機期間
最初の手続きが終わると、7日間の待機期間というものがあります。
これは「会社都合退職」「自己都合退職」に関わらず、全員共通の手順となります。
3)初回説明会に参加
その待機期間の後、指定された日の初回説明会に参加します。
ここでは、受給のための注意点など、失業保険手当に関する説明が行われ、参加は必須。
これを経て、正式に受給資格が発生することになります。
4)認定日までに必要な求職活動実績
以降は、約4週間に1度、失業状態にあることを確認する「失業認定日」にハローワークに行き、職員の方と再就職活動状況について確認をすることになります。
(自己都合退職の場合は、ここで約3か月の給付制限期間が発生します)
失業保険手当の受給期間中は、失業状態にある証明として、「求職活動実績」というものが必要になります。
これは、「再就職して働く意志があり、そのための活動をちゃんと行っていますよ」という証明となる実績のこと。
例えば分かりやすいところでいうと、求人への応募などが求職活動実績となります。
ただし、初回の失業認定日に関しては、初回説明会が実績に数えられるため、自分で新たに実績を作る必要はありません。(それについても、初回説明会で案内があります)
5)初回手当支給
この最初の失業認定日に、失業状態であること・求職活動を行っている実績が問題なく認定されれば、ようやく初回の手当が支給されます。
手当は、失業認定日の数日後に振込されます。
初回手当支給までの期間の目安は、会社都合退職の場合は、退職から約1ヵ月。自己都合退職の場合は、退職から約4か月です。
6)求職活動実績を作る
以降は、次回の失業認定日までに、求職活動実績を作っていくことになります。
1回の失業認定に必要な求職活動実績は2つですが、失業認定日に行われる職員さんとの面談がひとつの実績として数えられるため、必要な実績は実質月に1回。
とはいえ、特に受給期間が長い人の場合は、どうやって実績を作ればいいか迷うことも出てくるかもしれません。
求職活動実績を作る方法や、実績になるのかならないのかの基準などについては、下の記事にまとめているので、参考にしてみてください↓
関連記事)
>>【実例紹介】おすすめの求職活動実績の作り方まとめ!これで6か月の失業認定もクリア
>>これって求職活動実績になる?ならない?失業保険受給に必要な実績についてのQ&A集
まとめ
以上、長くなりましたが、退職後、失業保険手当を受給するための全手順についてでした。
上でも触れていた通り、「自己都合退職」か「会社都合退職」がひとつの大きなポイントになります。
会社都合退職にするためにはタイムカードなど証明が必要な場合もあるため、できれば在職中から失業保険受給のための準備を進めておくのがおすすめです。
精神的にも身体的にも、健康に再就職活動を行うために、失業保険手当は大きい存在。
詳しく知ることで、次の再就職を成功させましょう。
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